学制以来の改革と鳴り物入りで始まった現在の『大学入試改革』ですが、5年前の平成29年の3月、文科省の『高大接続システム改革会議』の最終答案においてその方向性が確定しました。
①『センター試験』⇒『大学入試共通テスト』 と名称を変える
②国語と数学に『記述式問題』を導入する
③民間の『4技能英語資格試験』を導入する
④『AO入試』⇒『総合型選抜』、『推薦入試』⇒『学校推薦型選抜』、『一般入試』⇒『一般選抜』 と名称を変える
⑤『ポートフォリオ』を『調査書』に詳細に記す
等が主だった内容です。当時進路指導部主任であった私はいくつかの説明会に出席し、大幅に大学入試は変わると実感していました。ある説明会では『評定平均値』(現在は『全体の学習成績の状況』)も意味がなくなると言われ、どうやって生徒を選考していくのか非常に不透明になりました。
それが、現在受験生(3年生)の生徒が入学した3年前ぐらいから文科省のトーンがだんだん下がってきて、説明会においては『記述式問題』の導入および『4技能英語検定試験』の導入が目玉だが、それ以外は大きく変わらないだろうと当初と雰囲気が変わってきました。そして令和元年の9月に羽生田光一氏が文科省大臣となり、大臣の失言も重なって『4技能英語検定試験』が見送りとなります。当時生徒から確認書を集め終わって出願するばかりの矢先の見送りでした。その年の暮れ、更に『記述式問題』の中止が決定されます。既に準備を始めていた受験生も多く、『大人の都合に受験生が振り回されている』とマスコミに書かれました。『記述式試験』はなくなりましたが、出題形式の変更を受けて『数学ⅠA』が60分⇒70分と時間変更となりました。中途半端感が残りました。
今年の1/16・17、『振り回された受験生』が初の『共通テスト』を受験します。平均点が下がる(60%⇒50%)と言われ、河合塾のボーダーも低めに設定されていました。ところが、出題形式の変化こそあれ、平均点は『センター試験』をさほど変わらない結果となりました。
5教科7科目文系 547(令和2年)⇒555(令和3年) 5教科7科目理系 552(令和2年)⇒571(令和3年) ※河合塾より
これだったら『センター試験』を変える必要はなかった、という声が多く聞こえました。
『私立大学一般選抜入試』も例年同様に行われ、『センター型入試』は『共通テスト型入試』と名称が変わっただけでした。ただ、さまざまな『大学入試改革』の情報から堅めに受験した生徒も増加し、『地元私立大学への総合型選抜および学校推薦選抜』で進学先を決めた生徒が多数出ました。チャレンジしたいのに早めに妥協した生徒が増えたことは『大人の都合に受験生が振り回された』と言えるでしょう。『国公立大学一般選抜入試』および『国公立大学共通テスト利用型選抜入試』においても、例年と大差ないように今のところ見られます。
この5年間の『大学入試改革』は何だったのだろう、現場にいた私は強く思います。今回の改革でとある業者は10億以上の損失だったと聞こえてきました。ひとつ私が感じたことがあります。それは『わかりにくいことは定着しない』です。今回の『大学入試改革』は当初非常にわかりにくく、『記述式試験の採点方法』、『ポートフォリオ』等は非常に内容が不透明でした。結果として『記述式試験』は中止となり、『ポートフォリオ』も一時期程言われなくなりました。『評定平均値(全体の学習成績の状況)』が0.1足りないから出願できない、『共通テスト+記述試験の合格最低点』に1点足りないから不合格である、こういったわかりやすい制度でないと残らないのだと思います。『4技能英語検定試験』等、今後日本に必要と思われるものもいくつか『大学入試改革』には取り上げられました。継続してよりよい『大学入試』に向けて日本は進んでいってほしいと思います。